猛暑のなか、山手線を徒歩で一周した夏。

意味のないことをたまにしたくなる。

コロナ禍のせいで学校もインターンも在宅。人と会う機会も減り、旅に出たくなった。

だが、旅に出たなんて記事で書いたら怖い大人に怒られてしまうかもしれない。怖い大人に怒られたくない。だから、東京を歩いて旅することにした。

というわけで、今回は徒歩で(コロナ対策で電車やバスをできるだけ使いたくない)東京を見て回ります。東京をまるっと旅するなら山手線だろ!という安直な理由で山手線の線路に沿って歩きます。

謎ポスト

8月13日、朝の品川駅に到着。スタート地点は駅構内にある謎のポストだ。

このポスト、山手線の起点となっているらしい。グルグル回ってるからスタートもゴールもないかと思てたが、正式な?山手線の線路は渋谷、池袋を通って田端までとのこと。(そこから先は田端〜品川が東北本線、東京〜品川が東海道線らしい)

8:00 品川

早速外に出て歩き始める。時刻はちょうど8時。外の気温は朝にもかかわらず30度でめっちゃ暑い。歩く時期を間違えたかもしれない。

楽しみな心とちょっと不安な気持ちが交差したが、上を見上げてみると…

「空、めっっっっっちゃ青い」

雲ひとつない青空。空が青いから絶対縁起良い。こりゃあうまくいくに違いない。

ちなみに山手線の線路の長さは30駅で34.5キロなので、だいたい線路沿いを歩くと40キロくらいになるんじゃないかな?という予想。1時間に5キロ、休憩を挟みつつ10時間以内に踏破したい。

品川駅

歩き始めて3分。さっきよりも撮りやすい駅名看板を見つけたので写真を撮ったのだが、シャッター音が鳴らない。何度撮っても鳴らない。今までこんなことなかったのに。

やっぱ縁起悪いのかもしれない…。そんなことを考えつつ線路沿いを歩く。

次の駅は大崎なのだが、実はこの品川-大崎間は山手線の駅間の中でも長い方なのである。というのも環状になっている山手線だが正円ではなく米粒みたいな形になっており、それぞれの頂点の部分のカーブが長い距離になっているのだ。

体力があるうちにひとつ目の難関を抜けられるのはありがたい。

囚われている

囚われしゆるキャラ軍団とかに応援されながらどんどん進んでいく。

奥の橋の影に見える橋が山手線

ここまで来てやっと山手線の線路が見えた。

線路の真横に道がなく、ずっと線路の外側の商店街を歩いていたので線路とのエンカウントに気分も高揚。ワクワクで歩いていると次の駅が見えてきた。

8:57 大崎

大崎駅

小学生の頃、狂ったように「甲虫王者ムシキング」の大会に出ていた時期がある。その時にたまに訪れていたのが大崎駅だ。

当時(2006年ごろ)では珍しい、電子マネーしか使えない謎のゲーセンがあったのだ。スイカやパスモの存在すら怪しかった当時、硬貨を使えないゲームセンターというのはかなり挑戦的だったのではないだろうか。

ちなみに大崎の大会では、僕の戦い方の癖をしっかりと把握している相手に完敗し、父親にめちゃくちゃ怒られた記憶がある。当時はいかに親が子供に戦術を指導できるかが重要だった。

ただのジャンケンだと思われがちなムシキングだが、「ひっさつわざ」という要素によってかなり戦略性が高いゲームになるのだ。意味eスポーツと言っても過言ではない。そんな大崎。

第一村人

第一村人発見。道に落ちているストロング缶の数は治安に比例するので逐一報告したいと思う。

歩き始めてから約1時間経って気温は32度。だんだん暑くなってきた。

「ふれあい」という言葉と「K字」という言葉が全然結びつかない。

ふれあいK字橋

ふれあいK字橋

ふれあいK字橋

9:17 五反田

五反田駅

そんなこんなで五反田に到着。品川から大崎までは1時間ほどかかってしまったが大崎-五反田間は20分で歩けた。これくらいのペースで歩けると嬉しい。

朝の涼しいうちに距離を稼ぎたいのでどんどん進んでいこう。

クッソ長い坂(写真奥)

やる気になっているのに目の前にクッソ長い坂が現れる。写真で見ると大したことないのだが意外と傾斜もきつい。まあでも、上りがあるということは楽な下りがどこかにあるということ。

あとで楽するために、頑張って進もう。

ここで初めて山手線とご対面!雰囲気出てきてテンションが上がる。

9:36 目黒

ビッグシティ・目黒についた。

大正義アマゾンの本社がある町。山椒がアホほど入ってて旨い麻婆豆腐の店がある町。高校のお金持ちの同級生が所有する眼鏡屋がある町。それが目黒。

スタートから1時間半、暑さでちょっと疲れも出てきたので日陰で一旦休憩。

ここまでで用意してたお茶2Lがなくなったので新しいお茶を買い足し、15分ほど休んで出発。

急に治安が悪そうな目黒が出てきた。後ろのニトリの看板の微妙な隙間も気になる。

さて、目黒を超えると、数駅ずつはさんで渋谷新宿池袋と大きな街が連続することになる。この辺りは僕の大学から行きやすい範囲でよく知ってるので距離感がなんとなく想像できて安心できる。

ちなみに道はまだ登り坂。品川-大崎間のちょうど反対あたりが池袋-大塚あたりだから、その辺から下りになるといいな。

10:17 恵比寿

恵比寿駅に到着。気温は33度くらい。

10時をすぎたからか、だんだんサラリーマンとは違う雰囲気の人通りが増えてきた。

相変わらず暑いけど、一つの駅を20分くらいで歩けると精神的にかなり楽に感じる。

恵比寿駅なのでこの人もいた。ビールは持ってなかった。

次は渋谷だ。ここから昼にかけて暑さも増しそうだし距離を稼ぎたい。

少し歩くと、急な下り坂が現れた。疲労も溜まっているのでありがたい…と思ったのだが、下り坂が急すぎて普通にきつい。ここまで登った分を一気に消費させられている。

渋「谷」という名前は伊達じゃないな…と感じた。

線路真横の道を歩いているとホームが現れた。3ヶ月前(2020年5月末)まで使われていた埼京線渋谷駅のホームである。山手線との乗り換えが非常に遠かったのだが、移設工事によって新ホームは山手線ホームの真横になったとのこと。使われなくなったホームはちょっと寂しそう。

5分ほどすると「工事中です!」みたいな場所に出た。きっと再開発でここにも高層ビルが立つのだろう。

渋谷の街はどんどん空が狭くなっていく。

10:43 渋谷

ハチ公まえにドーン!と到着するつもりでいたが、恵比寿から歩くと最初の渋谷駅はこっち側になる。

東急のお膝元、渋谷駅だ。この写真を見るだけでも奥の建物は東急百貨店だし、左下のバスは東急バスだしとにかく東急祭りなのだ。ちなみにこの写真で僕が立っている橋も、通称「東急ホワイト」という、東急の駅舎の塗装に使われる白で塗られているらしい。

東急の支配は建物や交通だけではない。

お分かりいただけただろうか。これはただ暑さで行き倒れているペットボトルではない。

「のるるんウォーター」である。

東急のマスコットキャラである「のるるん」。彼の肖像画がペットボトルに描かれている水なのだ。

水すら支配する東急、恐るべし。

渋谷っぽい方にきた。暑すぎて写真の撮り方が非常に雑だがスクランブル交差点である。奥に見えている高架が山手線だ。これに沿って歩いていくわけだが、いつの間にかまた登り坂になっている。そうか、谷を抜けるからまた上りなのか。アップダウンが地味〜にきつい。

道が山手線の高架と交わるあたりで謎の近代建築物が見えてきた。宮下公園に商業施設がオープンしたようで、以前の宮下公園の姿からは想像できないような大きな建物に、ハイブランドの店舗が多数入っている。

宮下公園といえば、僕が小学生くらいの頃に行われていたホームレスと行政の争いを思い出す。ナイキパークへの改装が決定し、宮下公園を根城としていたホームレスを行政代執行によって一掃したのだ。事情はいろいろあったんだろうけど、苦しい生活をしている人々の安息の地を奪ってまで作ったハイブラだらけの商業施設には、どれだけの価値があるのだろう。

11:19 原宿

原宿駅についた。左が最近利用が始まった新駅舎で、右が旧駅舎。木造でかっこいい。少し休憩して、日焼け止めを塗り直して次へ向かう。

急に治安悪くなった。ストロング缶とも目黒ぶりの再会だ。渋谷の辺りでは全く見かけなかったのが意外だった。いつもきれいにしてくれている人に感謝。

11時を回り、暑さがより一層増してきた。お茶は時速1リットルくらいのペースで飲んでいるが、頭がボーっとしてくる。その上「THE 国道」みたいな何もない道が続くのが一番辛い。

12:02 代々木

代々木についた。最近の広くて快適なタクシーが2台写っているけど、よく見るとちょっと形が違う。

ずっと歩いていたのでかなり疲れていたが、駅に着いたことでだんだん頭がはっきりとしてきた。

12:14 新宿

新宿に到着!お昼時ということもあってかなり人が多い。

お腹も減ってきたのでそば屋さんで休憩。

ぶっかけそば 500円

暑さで蒸しあがった体に冷たいうどんが染みる…!500円で買える天国がこの世にはあったようだ。気づかぬうちにお腹が空いていたのか、食べたらかなり元気が出てきた。足の痛みはないし、大丈夫。と思った瞬間に腰をつったけど、歩く。

強そう

急に現れたせいで笑ってしまった。

パワーマスク

めちゃくちゃ強そう。毛穴を救ってくれるらしい。

ちなみに新宿でもゴミが溜まっている場所はある。

酒が多いイメージだけど、落ちていたのはエナドリとジュースばかりだった。意外。

ペットボトルを見て思い出したのだけど、歩き始めてもう5リットルくらい麦茶を飲んでるのに一度もトイレに行っていない、というか行きたくならない。多分だけど全部汗で流れ出ているんだと思う。

またも暑さで朦朧としながら歩いていると、異国感あふれる飲食店が立ち並ぶ通りに出た。

新大久保周辺はコリアンタウンの印象が強いが、この一帯はインドやネパール、パキスタン系の店が多いようだ。

13:07 新大久保

新大久保駅に着いた。少し来ない間に駅舎が新しくなっていた。

新大久保のコリアンタウンは駅を出て右に広がっているが、左に行くと先ほどのようなインドとかネパール系の街が広がっている。

このように、料理に欠かせないスパイスや日本では売っていないようなお菓子が並ぶ店も多く存在する。

線路に沿って歩く関係でコリアンタウンはほぼ通らずに次を目指す。写真奥が線路なのだが、植えられている草が自由に生えすぎて壁のようになっていた。地形の関係なのか、この道も坂道なので、じわじわと心のゲージを削られる。

この後、草の向こう側を電車がすごい速さで通る瞬間を目撃し駅の遠さを実感することでさらに心にダメージを喰らった。頼むから早く減速してくれ。

13:30 高田馬場

そんなこんなで高田馬場。早稲田のお膝元なのでいつもお世話になっている街だ。安い居酒屋と酔いつぶれた学生の死体が無数にある。夜のロータリー広場は地獄のような光景であるが、今日は昼に来たので平穏そのものだった。

高田馬場のビックボックスで少しだけ休息をとり出発。

さっそく坂が出迎えてくれた。いつまで経っても上り坂が終わらないが、登った分だけ最終的に降ることになるので、あとの自分のために頑張ろう。

14:09 目白

目白駅についた。昔は目黒駅と関係があると思っていたが、全然離れた場所にある。名前の関係を調べてみると、風水的な観点で江戸の街を守るために作った「江戸五色不動」という5つ色からなる不動尊のが目黒と目白にあるんだとか。目黒不動、目白不動の他に目赤、目青、目黄が存在して、江戸の街を守ったらしい。

壁の落書き。クオリティが高いわけではないけど、可愛い宇宙人みたいな絵が描かれていた。

90円なのは嬉しいけどなぜかドットみたいになっていて不安になる。そう切る方が難しくないか?

14:32 池袋

池袋駅についた。ちょうどここで半分の駅を歩いたことになる。

広場にいた「もさぁ」って感じの質感のふくろうも祝福してくれている気がする。

さて、池袋まではある程度知っている街が多かったが、ここから先、上野あたりまではほとんど行ったことがない駅になる。長さの予測がつかないのが怖いが、空に雲が増えてくれたおかげで暑さはマシになった。どんどん進もう。

…と決意を新たにした矢先、ベトナム料理屋「バーミエン」が出現。別にパクリとかじゃないだろうし何も問題ないのだが、ムズムズした気持ちになった。

池袋から先、未知のエリアに踏み込んでいく…

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