さようなら、全てのエヴァンゲリオン。

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エヴァは、僕の青春だった。

初めてエヴァに出会ったのは、シンジくんと同じ14歳の時だった。

Qの公開直前に金曜ロードショーで放送された序と破を観て虜になり、録画で何十回も再生した。Youtubeに上がっている解説動画や考察ブログを舐めるように読み、同じ時期にエヴァにハマった友達とは連日ネットで得た知識を語り合った。教科書にエヴァっぽい言葉が出てくるたびにみんなで目を合わせてニヤニヤした日もあった。破の初号機覚醒シーンを再現する「エヴァごっこ」をすることもあった(幼稚)

テレビアニメ版から観ている猛者と比べれば知識も経験も浅かったが、人生で一番深くハマったコンテンツだったし、友達と語り合った日々は大切な思い出だ。

「一緒にシンエヴァ観に行こうな!」

友達と話していた。結局、中学どころか高校を卒業しても公開されなかった。

そんな感じで、いろんな思い出が詰まったエヴァ。

最新作が公開されると聞いた時には、正直耳を疑った。もう一生完成しないんじゃないかとすら思っていた。

だけどエヴァは本当に公開されるらしい。

ついにエヴァが、終わる日が来るのだ。

※これより先には、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||の内容に関する記述が含まれます。未見の方は、観た後にもう一度読んでいただけると嬉しいです。

先に断っておくと、僕は考察も得意では無いし感想を述べるのも苦手なので、マジで浅い感想でしかないし、ツイッターを少し漁れば同じような話をしている人が多分無数に出てきます。

それでも今の気持ちを文章として残しておきたいって気持ちが強いので、日記を覗き見するくらいの気持ちで流し読んでもらえるとありがたいです。

終わる世界

終わる終わると言っているけど、終わらないんじゃないか?

見る前はそんなことも割と考えていた。もしくは、またしっちゃかめっちゃかな状況になってなんの風呂敷も畳まずに終劇。そのほうがエヴァっぽいとさえ思ってしまった。

だけど、エヴァは終わった。最後はびっくりするくらいあっけなかった。

耳に残る宇部新川駅の列車接近メロディ。いきなり現れた現実の世界。

宇多田ヒカルの歌が流れている間は、まだ続きがあるかもしれないと思った。もしくはシン・ゴジラのように続きを感じさせる終わり方をするかもしれない。

その期待はすぐに崩れ落ちた。

白い画面の右下に書かれた「終劇」は、エヴァが終わったことをこれ以上にないほどリアルに感じさせる言葉だった。

寂しかった。Qから見始めた僕でさえ8年待った。公開までが長かった分、終わった後の世界が信じられなかった。

劇場が明るくなった瞬間、誰かが手を叩き始めた。次の瞬間、劇場内は大音量の拍手に包まれていた。涙を流す者もいた。

だけど、僕は拍手をする気にも、涙を流す気にもなれなかった。

ゴルゴタオブジェクト、式波シリーズ、アドバンスド・アヤナミ、アダムス、イスカリオテのマリア…

新しい用語がたくさん出てきたことで、疑問の方が強くなったのだ。

正直、純粋に感動して拍手をしたかったし、涙を流したかった。周りが羨ましいと思った。考察サイトにどっぷり浸かっていた弊害だ。

2回目はそこまで間を置かずに行った。ツイッターで他の人の解釈を見ることで腑に落ちた部分もあり、それでも理解できなかったところを注意しながら観た。「わかる部分」と「多分わからない部分」がわかったのでスッキリして劇場を出ることができた。

その後は就活中なこともありエヴァのことはあまり考えずに過ごしていたが、1週間くらいして急激にもう一度観たい気持ちになったので、その日のうちに劇場に行くことにした。

少し観ただけで解決できそうな疑問点はもう無いし、やっとあれこれ劇中に考えずに観れる。

さようなら、全てのエヴァンゲリオン。

エヴァの登場人物は、みんな何かが欠けている。チルドレンだけじゃなく、大人たちも完璧じゃ無いからこそテレビ版と旧劇場版ではドロドロとした展開があった。現実に生きる僕たちも同じように持っている「欠けた心」を無理矢理一つにまとめたのが、旧劇場版の補完計画だった。

一応ゲンドウはユイに会えたし、冬月先生や日向マコト、マヤさんなんかは幸せそうな顔をしていたが、苦しみながら死んだり、補完されたりした人も少なくなかった。

でも今回は、みんなが救われた。シンジくんはもちろん、どの登場人物も割といい感じに終わりを迎えていた。ミサトさんはカーペットを替えときゃ良いとか考えず、昔の姿でエンジン吹かして死んでいったし、ゲンドウも息子と対話した上で探し求めたユイを見つけて共に行くことができた。

補完の力を使わずにみんなが成長して終わりを迎えられたことは何よりも良かったし、3度目にしてしみじみと感動できたところだった。

そして、シンジくんが本当にすごかった。

何より心に残ったのが「なんでみんなそんなに優しいんだよッ!!!」って言葉。

説明するのも野暮なくらいこの通りなんだよなこの世界は。

何度失敗しても許してくれる、手を差し伸べてくれる人がいる。

もちろん僕が周りに恵まれただけで、シンジくんもシンエヴァでは周りがみんなめちゃくちゃ優しかったから恵まれてはいる。それはそう。

僕はマジで人に助けられて生きてきたから共感しかなかった。今生きててそう思えない人もいるかもしれないけど、絶対どこかに受け入れてくれる人はいると思う。

その事実に気づけただけじゃなく、成長して行動できたところがまたシンジくんの報われポイントで嬉しいやら寂しいやら…。

ミサトさんとちゃんと話し合えて、「行ってきます」「いってらっしゃい」のやりとりが再現されてるとことか、ほんとに良かったねぇっていう祖母みたいな気持ちになったし、ゲンドウとちゃんと話し合って、アスカにも想いを告げて…自分のことで精一杯だったシンジ君はどこへ、、、

嬉しさと寂しさがぐちゃぐちゃな中で物語はどんどん進み、Neon Genesis へ。

宇部新川駅の接近メロディーが、夢から覚める合図。大人になったシンジとマリが飛び出すのは、実写の世界。

「夢は現実のつづき。現実は夢の終わり」

旧劇場版で、綾波が言っていたセリフだ。

エヴァという長く甘い夢は終わってしまった。何度もループし、成長したシンジ君がたどり着いたのは、僕たちが今いるこの現実なのだ。

シンジ君は成長し、みんなを救った。僕はこのままでいいのだろうか。

現実は辛い。嫌のこともたくさんある。でも、もう大人になる時が来たのだ。

シンジ君から受け取ったバトンを次に繋げるのは僕だ。

それがわかった瞬間、僕自身にかかっていたエヴァの呪縛が解けた気がした。

「行こう」

シンジとマリの最後の言葉。

うん、行くよ。今までは嫌なことから逃げてきたけど、少しは根性出して頑張ってみる。

今までありがとう。

そして…

さようなら、全てのエヴァンゲリオン。

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