猛暑のなか、山手線を徒歩で一周した夏。

19:15 上野

上野についた。やっと知っている土地に来たという安心感がすごい。

歩道橋の上から写真を撮るために階段を登ったが、テンションのおかげで全然辛くない。

コロナ禍なのに意外と賑わうアメ横を通り、次の駅へ向かう。

20:11 御徒町

御徒町。パンダ的な像があったが疲れからか撮り忘れている。

めちゃくちゃ圧が強いジョナサンが登場。

20:29 秋葉原

秋葉原だ。この辺からはもう完全に知っている場所だ。

ただ、正直かなり辛くなってきた。毎駅少し座らないと、動く力が湧いてこない。さっきから感情の起伏が激しい。もうゴールは見えている。根性で足を動かす。

20:51 神田

マスクをつけていないキャバクラのキャッチに声をかけられる。「お兄さんどこいくの?」と聞かれたので

「歩いて品川まで」

と言いたい気持ちを抑えて進む。

21:17 東京

東京駅。めっちゃ綺麗。綺麗すぎてKITTEの上まで登ってわざわざ写真をとった。

あと少し。左足が痛い。

21:45 有楽町

有楽町。あと5駅、もう心で歩いてる。

何もないのになんか踏んでいるような感覚。点字ブロックが痛い。

写真も終わってる。

いつからこんなに弱くなってしまったんだろう。昔はもっと強かった気がする。大学受験はそこそこ頑張ったけど、大学に入って甘えの心が強くなってしまったのだろうか。

22:06 新橋

新橋。あと4駅、サラリーマンの街を駆け抜ける。右足も痛くなってきた。どこが痛いのかもよくわからなくなってきた。

SLのりて〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!になっている。ポカリスエットがめっちゃ甘い。ここまで多分5本以上ペットボトルを飲んだと思うけど、まだ体が水分を欲している。

22:31 浜松町

浜松町、あと3駅。思えば僕はいつも、何かを最後まで成し遂げられた試しがなかった。

そこそこの力で、なんとなくうまくやってきた。

23:07 田町

田町、あと2駅。

だけど、人間には絶対頑張らなきゃいけない時があるだろう。

大切な時には、頑張れる人間じゃなきゃいけない。

コンクリートから思いっきり伸びている謎の草も僕にそう言っている気がした。

23:35 高輪ゲートウェイ

高輪ゲートウェイ、あと1駅。今年完成したばかりの新駅だが、正式な開業は駅の施設が完成する2024年になるらしい。

死にそうな目になりながら、正面の写真を撮る。あと1駅、ゴールを目指すのみだ。

昼に塗った日焼け止めと汗が目に入って充血して視界はチカチカする。途中でひっくり返ったセミが急に暴れ出したけど、もうそんなものに反応することもできない。

でも、諦めたくない。足が棒だけど、進むしかない。

中途半端な自分は、2020年に置いていかなければならない。

23:58 品川

最後の駅、品川。

長い道のりだった。結局16時間くらいかかった。ゴールしたら喜びが爆発するかと思ったけど、心に湧いてきたのは感謝だった。

コロナ禍になって、普通が普通じゃなくなって、でも世界は続くし僕たちは生きていかなければならない。普段当たり前に乗っている山手線も、日々排出されるストロング缶が朝にはない街も、普通だと思っている世界は誰かの頑張りによって維持されている。

今すぐ何かできる訳ではないかもしれないけど、せめて感謝だけは忘れずに生きたい。

今日の仕事を終え、眠りにつく電光掲示板。

明日も、明後日も、2021年もずっと未来も、僕らの世界は続く。

自分の仕事が誰かのためになり、誰かの仕事が自分の役に立っている。その連鎖が輪のように繋がってお互いを助け合いながら、日常を過ごしていくのだ。

(おわり)

歩いた距離:55キロ

かかった時間:15時間58分

落ちていたストロング缶の数:5本

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