月とじゃがアリゴ

きのう、10月1日は中秋の名月と呼ばれるなんかよくわかんないけどめっちゃ月が綺麗な日だった。

肌寒くなり始める時間帯、薄暮の空にぼうっと浮かんだ黄色い月は、美しさとともにこの世のものではないみたいな不気味な雰囲気を醸し出していた。

そして今日、10月2日は満月。

中秋の名月だった昨日はじつはまだ満月ではなかったのだ。

せっかく綺麗な満月が見える夜、気温も涼しくちょうど良い。お月見日和だ。

そして、お月見といえば団子。スーパーなら売ってるかな?と思いすぐに和菓子売り場に来た。

パックに入った団子に手を伸ばした瞬間、一つの事実に気づく。

「あ、いま甘いものの気分じゃないわ」

口の中は完全に塩辛い系の気持ちだったのだ。

どうしよう。完全にいまは団子ではない。どうにか団子っぽいもので代用できないだろうか?

ふと野菜コーナーに目を向けると、ジャガイモの山が目に入った。

「じゃがいもって、ちょっと月みたいかも」

じゃがバターが食べたい。体は今そういうやつを求めてる。でも今から芋をふかすのめんどくさい。どうしよう。完全に芋の気分だ。

いろいろと悩んだ結果僕が出した結論は、題名の通り「じゃがアリゴ」を作ることだった。

知らない人のために説明しておくと、じゃがアリゴはお菓子の「じゃがりこ」にお湯とさけるチーズを入れて混ぜて作る悪魔の物体である。

誰かが開発したレシピがTwitterをはじめ各所で大バズりし、みんなこぞって真似をしてはインスタのストーリーにその様子をあげていた。

今やじゃがアリゴの話をしている人は誰もいない。みんな悪魔に殺されてしまったのだろうか。

さっそく材料(といってもじゃがりことさけるチーズ)を買って帰宅。

さけるチーズを割いてじゃがいもに乗せて、お湯を上から注ぐ。

2分待ってかき混ぜると、だんだん固まってそれっぽいものができはじめた。

写真が下手すぎるのと机が絶望的に汚くてあまり美味しそうに見えないが、じゃがアリゴの完成だ。

さっそく食べる。

「めっっちゃうまい…」

ヒトはなぜこんなうまいものを放置してしまったのだろうか。こんなに簡単に作れるのに、誰もやっていない。いや、やっているのかもしれないがストーリーにはもう上がってこない。

空を見れば、美しく輝く月がある。

昔の人が中秋の名月と言ったから、今でもこうやって、とくべつ10月の月をありがたがるのだろう。

10月の満月は素晴らしい。同じくらいじゃがアリゴも素晴らしい。

でも、じゃがアリゴは一過性の話題として消費されてしまった。

もしも、じゃがアリゴを昔の人が讃えて日記や文学にのせていたなら、人類は今でもありがたがってじゃがアリコを食べていたのだろうか。

ネットの発達で情報が簡単に手に入るようになり、昔よりも「すごいもの」のハードルが上がってしまったような気がする。「クラスで一番絵が上手い子」が持っていたはずの自信は、ネットで神絵師の作品を見れば簡単に崩壊してしまう。机の周りに集まって「スゲェー!」ってなるアレも、以前より減ったかもしれない(想像だが)

もちろんノウハウは入手しやすいし、上を見て燃える人も多いかもしれない。だが、見えないところで描くのをやめて行った人もいるんじゃないだろうか。

僕たちは、「すごいもの」のハードルを少し下げてもいいのかもしれない。上がりすぎたハードルを前に互いがけなし合うよりも、ちょっとのことでもほめあえる社会の方がいいに決まってる。

まあ、つまり…

じゃがアリゴは最高だよってことです。

おわり

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